糖質制限を推奨する人は例外なく肉食を推奨します。これはどの書籍でも共通している事です。しかし多くの人は肉食そのものが体に悪い、というイメージを持っています。これは健全な考えでしょうか?
そもそも論として、肉食が体に悪いというのはいつ頃から言われた事でしょうか?
肉食と穢れ
日本においてはおそらく「穢れ」概念の強かった江戸時代頃ではないか、と思います。
江戸時代にも鉄砲を使う猟師はいましたし、山くじらとしてイノシシ肉を出すももんじ屋という商売も歴史小説では広く取り上げられているところです。
実際、高校の頃の歴史の授業では一般農村では死んだ牛馬はとりあえず土をかけて埋めた、という体裁をとってから直ぐに解体して食べていたと歴史教師が言っていました。
病気になったら肉を食べて精を付けるとか、ウサギは一匹ではなく一羽と数えるとか、大っぴらには食べないけれども、こっそり食べていたというのが事実に一番近い思われます。
また、江戸時代の食通の古書を読むと、肉を食べたいけど自分の器は使いたくないからよその家から借りた器でイノシシ肉を食べて、その事が器の持ち主に知れて大喧嘩になったという話があるそうです。それくらいは肉=穢れの概念は強かったのでしょう。
このあたりは語りだすとキリがないし、僕が解説するより神々と肉食の古代史とか肉食と日本人などの書籍を読んだ方がより正確かと思います。
まあ、貴重な農業重機である牛馬を食べるなんてトンデモナイという実際的な理由も大きかった事は間違いありません。
それに1kgの肉を作るためには大量の穀物(豚肉だったら10kgの小麦)が必要になるので、肉食を推奨すると飢える人が出るという経済的な理由もあったかと思います。
日本に肉食が一般化してくるのは明治時代、文明開化と牛鍋の話は教科書に載っているくらいですね。
その後時代が下って、安い肉が大量かつ簡単に手に入るようになると、今度は生活習慣病などの贅沢病が生まれるようになります。
いわゆる飽食の時代の始まりです。
日本においては飽食の時代が始まってから50年も経っていませんが、この時に増えてきた病気の原因として肉食がやり玉にあがりました。
今から見直せば信頼に足るデータが無いにもかかわらず2型糖尿病や生活習慣病、各種ガンの原因とされたのです。
確かに希少だった肉が食べられるようになったら病気が増えた!とみんな皮膚感覚で感じたので、両者が結びつくのは簡単だったと言えるでしょう。
また病気=肉だけでなく、日本人が古くから引きづっている「穢れ」の意識も肉食を出来れば避けるべきものとして扱う理由に加わったと思います。
本当に肉食は病気の原因なのか?
糖質制限で肉食を推奨するのは、病気の原因が肉や脂肪ではなく糖質であるという点にあるからです。
これは様々な書籍を介して人口に膾炙していますし、その根拠もかなり強力で間違いはないと思われます。
これは糖尿病の治療をする医師らが臨床データをもとに学会で発表したり、書籍を通じて世に訴えている事です。
そして、僕を含めて糖を減らせとは主張していますが野菜を食べるのを止めて無制限に肉を喰いまくれ!とは言っていません。
しかし、肉食そのものについて強い忌避感を持っている人は多く、欧米におけるベジタリアンやヴィーガンの中には肉食を止めさせるべく、わざわざ屠畜場のショッキングな動画や猟で得た獲物の解体画像などを使って宣伝活動をする人も一定の割合で存在します。
実際、僕のブログ記事にもたびたび上から目線の書き捨てコメントが増えてきました。
まあ、コメントの是非は読んだ人にお任せする以外ないですが、なんでも後出しの方が強い印象を与えるものです。
コメントの中でもコリン・キャンベル医師について触れたものがあったので、調べてみました。
チャイナ・スタディー 葬られた「第二のマクガバン報告」(合本版)
グスコー出版
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wikiだけでなく、著作の評価やガイドラインをチェックしたところ、重要な主張は10年間にわたって中国で行った大規模調査(チャイナ・スタディー)を踏まえて下記になります。
チャイナプロジェクトの調査結果において動物性食品を最も多く食べていた人達は、最も多く慢性病を発症していた。比較的少量しか食べていなくても動物性食品は有害な影響を及ぼしていた。一方、植物性食品を最も多く摂取していた人達は、健康で慢性病から免れる傾向にあった。
すべての慢性病(心臓病・各種ガン・糖尿病・脳卒中・高血圧症・関節炎・白内障・ED(勃起不全)自己免疫疾患・骨や腎臓の病気・高齢者の視力やアルツハイマー等の脳障害等)の回復と、予防が再三証明されている食習慣とはラントベース(植物性食品中心)のホールドフード(未精製・未加工の食べ物)で構成された食事である。
糖質制限とは真逆の主張ですね。
著作には絶賛のコメントもついていますし、読者のブログを読むと一定の価値があるように思えます。
この本を読んでいれば僕のブログに匿名で一言いってやりたくなる気持ちも分からないまでもない(笑)
コリン・キャンべル批判
ところが英語で「the china study 」を検索すると、批判がボロボロ出てきます。
そもそも、こんなのは良くある話。
下記の記事などはデータの抽出方法がいかにおかしいか、という事について1万文字以上費やして解説しており、他にも批判記事がたくさん見つかります。
The China Study: Fact or Fallacy?(チャイナスタディーはホントか嘘か?)
URL:https://rawfoodsos.com/2010/07/07/the-china-study-fact-or-fallac/
データの整合性がおかしい、バイアスがかかっているなど実に具体的です。
Why does Campbell avoid mentioning anything potentially positive about animal products in “The China Study,” including evidence unearthed by his own research?
なぜキャンベルは、彼自身の研究によって発掘された証拠を含む「中国研究」における動物製品に関する潜在的な陽性( potentially positive)の言及を避けるのでしょうか?
Dietitians’ Review the China Study(栄養士によるチャイナスタディーのレビュー)
URL:http://www.healthyeating.org/Blog/Article/519/Dietitians-Review-the-China-Study.aspx
The China Study is an observational study, in other words it only identifies relationships between different variables. It does not prove that a particular behavior or food choice causes a certain outcome. There are many other variables in the Chinese villages studied that could increase cancer risk that were overlooked—such as industrialization, exposure to chemicals, sugar and refined carbohydrate consumption. These could easily have been the culprits responsible for differences in cancer risk among groups
中国の研究は、それが唯一の異なる変数間の関係を識別し、他の言葉で観察研究、です。これは、特定の動作や食品の選択は、特定の結果を引き起こすことを証明していません。それが見落とさ-などをされた工業、化学品、砂糖と洗練された炭水化物の消費量への暴露などの癌のリスクを高める可能性が研究され、中国の村で他の多くの変数があります。これらは、簡単にグループ間でがんリスクの違いを担当犯人だったかもしれません。
チャイナ・スタディ批判の結論としては、データを恣意的に抜き出して好ましい結論に誘導しているという事に尽きるようですね。
もちろん、上記の記事を読んで何を信じるかは読者次第。裁判官はあなた、と海外のブログでも書いてありますし、単一の要素だけが病気の原因になるわけではない、という事を消費者は知るべきだと抑えた論調で書かれていたのが印象的です。
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質
糖質制限では糖質を減らすことが大事なので、タンパク質は動物からとっても植物からとってもかまいません。
動物性たんぱく質ばかり取れとか、大豆しか認めないという事はありません。
しかし、なんとなく肉の食べ過ぎは体に悪そうだと思うのが普通ですし、僕もそう思っていましたが、この動画を見て下さい。タイトルは全く内容を反映していないので注意です。
この番組で紹介された記事はこちら。
低脂肪タンパク質の健康効果、大規模調査で裏付け
URL:http://www.afpbb.com/articles/-/3095991
重要な点はここです!
例えば、赤身肉や、卵やチーズなどの脂肪分の多いタンパク質を豊富に摂取する食事は、他の点では健康な人の死亡リスクの上昇との関連は認められなかった。だが、大量飲酒、過体重、運動不足、喫煙などの他のリスク因子を1つ持つ人が赤身肉を多く摂取すると死亡リスクが上昇する可能性が高くなった。
リスク因子無ければどっち食べてもいいというのが最新かつもっとも信用できる結果なのです。
以前も下記の記事で書きましたが厳密に話そうというのなら、3点セットでないといけないのです。
うつの原因はケトン体なのか?食の欧米化とご飯の摂取量について
- 主張(クレーム)
- 根拠(データ)
- 根拠の信頼度(ワラント)
この場合、それぞれは下記になります。
クレーム:身肉や、卵やチーズなどの脂肪分の多いタンパク質を豊富に摂取する食事は、他の点では健康な人の死亡リスクの上昇との関連は認められなかった。
データ:米医学誌「JAMAインターナル・メディシン(JAMA Internal Medicine)」に発表された調査結果。
ワラント:米ハーバード大学(Harvard University)の研究者らが主導し、13万人以上の30年以上にわたるデータ。
ちなみにチャイナスタディーは下記。
クレーム:動物性食品を最も多く食べていた人達は、最も多く慢性病を発症していた。比較的少量しか食べていなくても動物性食品は有害な影響を及ぼしていた。一方、植物性食品を最も多く摂取していた人達は、健康で慢性病から免れる傾向にあった。
データ:中国農村での調査結果。
ワラント:アメリカ国立癌研究所が資金提供し、イギリスのオックスフォード大学、アメリカのコーネル大学、中国のがん研究所をはじめ様々な国家の機関が関わり1983年から1990年にかけて中国で行われた。
一見するとチャイナスタディーも3セット揃っていて裏付けがあるように思われますが、批判が集まるのは出てきたデータからクレームを導き出す流れがおかしい、という点です。
データ解釈の妥当性が問われている訳です。
また、ハーバード大の方のクレームの強みは多人種である事とリサーチ期間が長い事です。
チャイナスタディーの方はというと、中国農村は中国人しかいないのが普通ですし、調査機関的にも三分の一以下なのでディベート的には不利だと言えるでしょう。
もちろん、ジャッジするのは読者です。
菜食主義は宗教か?
ベジタリアンにせよヴィーガンにせよ、肉を食べないというライフスタイルには様々な階梯があります。
植物を摘み取るのは命を奪う事だから実しか食べないとか、葉っぱを千切るまでならOKとか。
この根本にあるのは何なのか僕なりに考えてみたのですが、一種の宗教だと思うのです。
教条的ですよね、ぶっちゃけ。
ほどほどでいいよ、っていうのが無いから先鋭化した一部がグロ画像を張り出してこんなムゴイ事が~って騒ぎ立てるように見えるのです。
何だか分からないけど、自分が生き物を食べて生きているという事を消化出来なくてパニックになっているようにしか思えないのです。
糖質制限にせよ、菜食主義にせよ、先鋭化したら意味はありません。
それに自分の主張を他の人に知ってもらいたいと思うなら自分で記事を書くのがいいでしょう。
僕が初コメントをもらったのが半年後になったように、糖質制限はいいよっていうネットの独り言が、不特定多数に読んでもらえるまでに進化するまでにはそれなりに時間と労力がかかります。
それが嫌だからって、他人が作って興味ある人が見に来る人がいる記事に書き込むのはダサいと思うのです。
僕だったらベジタリアンのブログにこういうのとか書かないけどなぁ(笑)
コメント
過去に精神が不安定になり、ストレス過敏性腸症候群とパニック障害で悩んでた者です。特に電車、車、バスがダメで、このままでは子供をどこにも連れていけない!と思い、色々と調べる内、断食や糖質制限がいいと聞き、検索してるうちにここに辿り着きました。
こちらのサイトを含み、色んな本や雑誌、ブログに書いてある内容を参考に断食を3日間実践、回復食後に糖質制限プラス夜にヘム鉄サプリの食事生活に変えました所、半月ほどで過敏性腸症候群が治り、2ヶ月ほどでパニック障害がほぼ治りました。
ケント体チェックも買って、チェックもしつつ、運動も定期的にして、今ではどこでも旅行に行ける体になりました!
ほんとに自分は、どんな時もソラナックスが手放せず、持ってくるのを忘れたと気付いた途端、下痢になるわ過呼吸になるわで本当に大変だったのですが、今では電車も車も大丈夫で、、、何が言いたいかって、こちらのようなサイトさんのように、情報や体験談を書いてくださるサイトは、自分のような人間には本当に本当に本当に !!!ありがたいサイトなのです。
ちょっと失礼なコメントを残される方もおられるようですが、私のように救われた人間がいるのだと言う事をお知らせしたく、長くなりましたが、初めてコメントをさせて頂きました。
ありがとうございました、これからも応援してますし、見続けます!
P.S.
私のオススメの本は、脳はバカ、腸はかしこいです。まだでしたら良かったら。ちょっと笑えて面白い本でした。
みやさと 様
コメント頂きありがとうございます。カズヒロです。
最近は自分の問題が解決したせいで筋トレ系の話題が増えていますが、今後も糖質制限系の記事を書いていきたいと思います。
また、おすすめの「脳はバカ、腸はかしこい」は以前読んだことがありますが、現在は手元にありません。
見つかったらレビューを書いてみたいですね。