ネットで炭水化物ダイエットについて調べていたらもう酷い記事ばかりが目について絶句。引用元付きで反論したいと思います。いや、もうホントに酷かった。
友人に糖質制限を勧めたら、炭水化物ダイエットとどう違うのかと話をされたのでその場で「炭水化物ダイエット」で検索してみたら驚愕。
どことは言いませんけど書いてある事のほとんど全てがウソってどんなサイトだよ!
こういうデマ記事のサイトがあるから、糖質制限が馬鹿にされるのだと思います。
ホントに酷い、噴飯ものです。
炭水化物ダイエットとは?
これは炭水化物抜きダイエットとか、炭水化物無しダイエットと呼ばれているらしく、糖質制限とは名称で差別化されています。
炭水化物を抜く事ですい臓からグルカゴンという脂肪を燃焼させるホルモンの分泌を促し、基礎代謝を上げて脂肪を燃焼させやすい体を作るダイエットだそうです。
やり方としては2週間にわたって1日20gまで炭水化物の摂取を減らし、その後は野菜や果物から炭水化物を摂取するとの事。
糖質セイゲニストからしてみたらびっくり仰天です。
非糖質制限者の人は大前提として炭水化物は糖質に変化するという点を踏まえて続きをご覧ください。
グルカゴンについて
グルカゴンは血糖値を上昇させるホルモンです。だからグルカゴンを大量に分泌させる事で脂肪を燃焼させるという理屈自体がおかしいのです。
何故なら糖質(この場合は炭水化物でもいいですが)を摂取すると血糖値が急上昇してしまうので、血糖値を下げるインシュリン(インスリン)の大量分泌が必要となり、インシュリンの分泌が悪くなると血糖値がさがらなくなり、これが糖尿病と呼ばれます。
江部氏の著作の「体脂肪の根源は余った血糖」のチャプターによれば下記のように記載されています。
インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。
逆に血糖値を上げるホルモンは「グルカゴン」「アドレナリン」「成長ホルモン」「コルチゾール」など数種類あるのに対して、血糖値を下げるのはインスリンだけなのです。
~中略~
果糖を除くと、これらの糖質は消化後に分解されてブドウ糖となり、小腸から体内に吸収されます。このブドウ糖を「グルコース」と呼び、血液中のブドウ糖が「血糖」、100ml(1dl)中の血糖の値を「血糖値」と呼びます。
血糖は、とくに脳や赤血球、眼球の内側にある網膜などが好むエネルギー源ですが、それ以外の全身の細胞が利用します。ところが運動時を除くと、食事でとった糖質が細胞で残らず消費される事はあり得ません。
食後に血糖値が上昇すると、インスリンが大量に追加分泌されます。すると血糖が筋肉の細胞に取りこまれ、まずエネルギー源として利用されます。それでも余ると血糖は「グリコーゲン」というかたちで筋肉と肝臓の細胞に蓄えられます。これらの細胞で消費したり蓄えきれない血糖は、インスリンによって脂肪細胞にとり込まれ。「中性脂肪」になるのです。
~中略~
そこで引き受け手がなくなった血糖は、インスリンによって最終的に脂肪細胞へと回されて中性脂肪に合成されて体脂肪となります。体脂肪の大半はこのように余った血糖から合成されているのです。
人類最強の「糖質制限」論 p164~p165
つまり血糖値が上がれば上がるほど太るという事です。仮に上昇した血糖値が脂肪細胞へ回されないのであれば100%糖尿病の症状となります。
炭水化物ダイエットの大前提を訂正
正しくは下記になるわけで炭水化物ダイエットは前提条件が間違っているのです。
訂正1
誤)炭水化物を抜くとグルカゴンが分泌されて血糖値が上がる
正)糖質に変化する炭水化物を抜くと高血糖状態にならないのでインスリンが分泌されない。
訂正2
誤)グルカゴンは血糖値を上げて脂肪を燃焼させるホルモンである
正)グルカゴンは血糖値を上げるホルモンであるが、脂肪を燃焼させる事とは関係がない。
この前提条件が間違っている上にダイエット理論が立っているのですから、炭水化物抜きダイエットはメチャクチャです。全てが間違いだというのも当然だと言えます。
その上、ご飯を食べないと脂肪を燃焼させるホルモンが分泌されて血糖値が上がると言ったのに糖尿病患者が行っている食事法で、糖尿病予防に役立つとまで解説しています。
確かに糖質制限は糖尿病患者にとって有効な食事法ですが血糖値を上げたくないのが糖尿病患者です。
ここに至ってはツッコミをいれるのも疲れるレベルで、ダイエット業界の滅茶苦茶さに茫然とします。
何でもいいからそれらしく書いておけばいいのかよ(怒)
きっと血糖値が上がる事と代謝が良くなる事を同等に考えており、いい事だと勘違いしているのでしょう。
トンデモナイ誤りです。
炭水化物ダイエットの危険性について
次に危険性について下記のように説明されていました。
これも唖然とする内容です。
- 炭水化物は人間にとって不可欠であり、全く食べないというのは良くない。
- 炭水化物の量が減ると脳に栄養が行き渡らなくなり思考力が落ちて考える事が出来なくなる。
- 炭水化物の摂取量が減ると、脂肪をエネルギーとして消費するが、匂い成分が発生してしまうため、身体が臭くなってしまう。
まずどうして炭水化物ダイエットなのにケトン体の事が解説されていないのか?
江部医師の本の「脂肪が脳のエネルギー源になる」のチャプターを紹介します。
「脳のエネルギー源はブドウ糖だけだから、糖質制限をすると頭が働かなくなる」という誤解が、一般の人だけでなく医師や栄養士にもあるようです。しかし、脳を構成している神経細胞のエネルギー源は、ブドウ糖だけではありません。
脂質の代謝物であるケトン体もエネルギー源になるのです。
脳の神経細胞を養う毛細血管には「血液脳関門」という関所のようなところがあります。ブドウ糖はこの関所を通貨出来るのですが、脂肪酸は分子が大きすぎて通過できません。
ところが、脂肪酸から生じるケトン体はこの関所を通過出来る為、脳の神経細胞のエネルギー源になるのです。
糖質制限をすると「脂肪酸+ケトン体」のエネルギー回路が活性化しますから、脳の神経細胞がエネルギー不足になって頭が働かなくなるということはありません。
世界中の医学生や医師たちが頼りにしている生理学のテキスト「ガイトン臨床生理学」には次のように記されています。
「イヌイット(カナダ北部などに住むモンゴロイド系の先住民族)はときどき完全脂肪食を摂取するが、通常、ブドウ糖しかエネルギー源として利用しない脳細胞もこのときは50~70%のエネルギーを脂質代謝産物であるケトン体から得られるようになる」
冬季になるとアザラシやクジラなどしか食料がなくなるイヌイットの完全脂肪食は、いわばスーパー糖質制限食です。
糖質制限をすると頭が働かないという批判は、こうした文化人類学的、生理的な事実を無視した風評被害のようなものです。
そもそも糖質制限を実践していても、肝臓の糖新生によって脂質とタンパク質から糖質が作られますから、血糖値は常に正常に保たれます。
脳の神経細胞と違って血液中の赤血球はブドウ糖しかエネルギー源に出来ませんが、それでも糖新生によって何の問題も起きないのです。
人類最強の「糖質制限」論 p172~p173
江部医師の著作のほかにも宗田医師の著作によれば臍帯血を分析した結果、高濃度のケトン体が検出されています。胎児の栄養源は母体からのブドウ糖ではなく、ケトン体なのです。
また、臭いについてのデメリットについて、ケトン体を使うようになるとケトン臭とよばれる体臭がするそうですが僕自身は指摘されたことは一度もありませんし、医師らの著作でもほとんど触れられていません。
確かにジムでプロテインシェイクを飲みながらトレーニングをするような筋肉ムキムキの人からは時折、独特の体臭がすることがありますが、それも発汗時に限られます。
デメリットとして気にするほどの事なのか疑問に思うところです。
炭水化物ダイエットのリバウンドについて
これは糖質制限も含めてあらゆるダイエットについて回る問題ですが、デメリットの中でも特に大きな問題として取り上げられていました。
低血糖状態だと脳が糖質を求めるのでカロリーの高い炭水化物を食べ過ぎてしまうそうです。
確かに糖質制限を始めたばかりの頃はご飯やパンを無性に食べたくなる時がありますが、2週間もすれば平気になります。
糖質には中毒性があるというのは複数の糖質制限の書籍にも記載されていますし、僕自身も実感しています。しかし、1~2週間で食べてしまった事をリバウンドと呼ぶかは微妙です。
絶食や断食のように実践後に筋肉まで落ちて代謝量が減り、かえって太りやすい体質に変化するわけではありません。あくまでも本人のメンタル的な問題ですからこれをハイリスクかといわれると疑問です。
炭水化物ダイエットはおすすめ出来るのか?
糖質セイゲニストとしては炭水化物ダイエットについて調べるほどに危険なダイエット法だという印象を受けました。
理由はこれまで述べてきた通り。
炭水化物を控えて痩せるという点は頷けるのですが、その理由が完全に間違っているのです。出鱈目な道を通って偶然ゴールに到着したようなもので、到底おすすめ出来るものではありません。
複数の医師がエヴィデンス(根拠)付きで安全性や有効性を解説してくれる糖質制限を始める方が良いでしょう。ご飯やパンを食べないという表面上での類似点はありますが、その本質は大きく異なるのです。
何も知らない友人が炭水化物ダイエットと糖質制限を一緒に考えていたのも当然です。
いち糖質セイゲニスト、糖質制限実践者としては出来るだけ世間に誤解されたくないし、理解が深まって欲しいです。
さもないと親に「糖質制限していた人が死んだからお前もヤメロ」と言われたように、心配をかけるし誤解を解くのも大変。ホントにデマは止めてほしい。
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