ネットで糖質制限関係のニュースを漁っていたら面白そうな映画を見つけました。上映館が少ないのですが、久しぶりに都内に出向いた時に時間があったのでチェックしてみました。
打ち合わせの帰り道、上映開始時間がスケジュールピッタリだったのが、渋谷のイメージフォーラムでした。
マイナー映画ばかりを上映するホントに小さな映画館で、サブカルにハマった学生時代を思い出しました。懐かしい。
さて、いったいどんな映画なのかというと、こんな話。
オーストラリア映画で原題は「That Sugar Film」です。
- 普段の食事の中にどれだけ砂糖が含まれているか?
- 砂糖を取りすぎる事でどんな不調が起きるか?
- 砂糖の制限は何故行われないのか?
主にこの3点がメインテーマとなっている上で、主演にして監督のデイモン・ガモーが毎日砂糖を160g摂取したら2か月でどんな肉体的変化が起きるのかレポートしています。
元々のデイモンは糖質制限者(とは劇中で明言されていませんが確実!)で、パンすらほとんど食べないような食生活をしています。朝食は目玉焼きに野菜、チキン、間食にチーズとナッツ。夕食は肉にアボガドなど。1日のカロリー摂取量は2300kcalで健康そのもの。
そんなデイモンが砂糖160g(スプーン40杯分)を毎日摂取して、カロリー量を同じにした食生活に挑戦します。この時にハンバーガーなどのジャンクフードは食べない事もルールです。
さて・・・・。
ここで大問題なのが、砂糖のみで160gを摂取すると言う事。これはショ糖や果糖のみで160gを追加しているので、食品に含まれる乳糖や炭水化物とは別に摂取しているのです。
ショ糖でも炭水化物でも体内で分解されればブドウ糖になるのですから同じこと。これは糖質制限者なら良く知っている事です。
つまり、デイモンは糖質量で計算したら1日300gを軽く超える量を摂取している事になるでしょう。
実際、朝食のシリアルを食べる時に、シリアルに白砂糖40gを追加で振りかけていますから、炭水化物だけで言ったらこの時点でトンデモ無い事になっています。
さらにアップルジュースも飲みます。これで既に砂糖分だけで80g。角砂糖20個分に相当します。
デイモンは朝食だけで1日ノルマの半分の砂糖を摂取してしまった事に戦慄します。
シリアルに含まれる糖質も含めたら恐ろしいですね。
でも、これが朝食に砂糖やチョコレートでコーティングしたシリアルを食べてジュースを飲む一般人が摂取している糖質量なのです。
更に恐ろしいことに、そのシリアルもジュースも健康食品として販売されているのです。
決してジャンクフードではありません。
他にも間食でジャムの付いたクラッカーを食べますが、この時にジャムと同じ砂糖の量を取るために20g分の角砂糖(角砂糖5個)をクラッカーで挟んで食べたりします。
もちろん、糖質制限者ならクラッカーに含まれる炭水化物(糖質)分は別計算となりますから、オール角砂糖で表現してもおかしくありませんよね(汗)
そんな食生活をしながら、健康食品の中にも砂糖が含まれている事。砂糖が含まれていても甘くないので沢山摂取出来てしまう事を身をもって紹介してくれます。
また、急激に砂糖を使った白人世界の食生活が入り込んできたことで、アボリジニの人達が糖尿病や心臓病、ぜんそく、皮膚病などの様々な疾患にかかり早死にしている事も紹介。
食事教育のプログラムを行う事で健康が改善されましたが、何故かオーストラリア政府が補助金を停止した事なども語られます。アボリジニの人達は白人文明に触れるまではほとんど砂糖(糖質)を摂取しない生活をしていたのですから、耐性も無くてバタバタ病気にかかったようです。
そして映画の後半は肥満のメッカ、アメリカを訪れます。どこを見ても甘いものだらけ、ジャンクフードだらけで食事をしようにも店が見つからない有様です。
ルールでジャンクフードは食べない事になっていますから、やっとのことでサブウェイを見つけるまでデイモンはかなりの距離を彷徨います。
「ここで生まれ育ったら選択肢はないんだ」
と、いうセリフは重いですね。
そしてアメリカでは企業の売上が下がるので、食育がほとんどされていない事も明らかになります。
食育には金は出さないけれども、虫歯の手術設備のある車なら援助するという企業のやり口はヤバいです。
子供の頃からマウンテンデューを1日40本(350ml缶)飲み続け、
10代で総入れ歯になった少年がそれでもらマウンテンデュー飲み続けると言ったり、
親が哺乳瓶で清涼飲料水を飲ませるという狂った現実も・・・。
この少年、あまりに虫歯が酷すぎて常に口の中が化膿した状態です。麻酔を打っても全く効かないので歯を抜く際の痛みが全く軽減されません。実際に歯を抜くシーンが映画にありますが、手術台の少年の腕とか首筋の力み汗、苦悶の表情は見ている方が痛く感じる位。
こんな有様になっていても飲み続けるというのはもう砂糖中毒としか言いようがありません。
売上の為、そんな中毒を引き起こすべく企業が行う凄まじい商品開発も紹介されます。
ドクターペッパーは40段階に砂糖の量を調整されたドリンクを3000人にテストして、もっとも反応が良かった砂糖の量が決定されたとの事。
また、清涼飲料水は砂糖の量に比例して売り上げが上がるけれども、ある閾値を超えると逆に反応が悪くなるポイントがあるそうです。
そこをスイートスポットと呼び、売り上げが最大化できる砂糖の量を探っているのだとか。えげつない!
また、食品メーカーから研究資金を援助された学者が砂糖が安全だという事をアピールするシンポジウムを開いたりPR活動をしています。
これは日本でも同じ図式がありましたね。
原発を擁護する御用学者とか、糖尿病の製薬メーカーからお金を貰っている医者とか。
そして最後、デイモンは摂取カロリー量が以前と同じかそれ以下の日があったにも関わらず、体重が増え、肝臓や血液の数値が危険域に達してしまいます。
やはり糖質制限のクラスタで常識になっているように、カロリーはダイエットに何の関係も無いという事が劇中でも明らかになります。
飲みすぎ食べ過ぎなければ大丈夫、肥満は自己のカロリー管理能力の欠如という企業のレトリックは責任逃れのウソだと言えるでしょう。
結論として、砂糖の危険性を子供たちに教育しなければアメリカのような有様になってしまうと警告しています。
映画のラストではシュガーマン(だったっけ?)が砂糖を取りまくれ!と歌いまくるコマーシャリズムを皮肉ったミュージッククリップが流れて終了。
映画に不満な点と今後の流れ
元々、食品業界に対するドキュメンタリー映画としてはマクドナルドで食べ続けるスーパーサイズミーが有名でしたが、まだ問題は矮小でした。
スーパーサイズミーではジャンクフードだけが肥満や病気の原因としてやり玉に上がっていたからです。
本作はそれよりも少し先に進み、砂糖がダメなんだ!と主張しています。これはジャンクフードの業界だけでなく食品業界全般に当てはまる主張です。
しかし、本来なら小麦やトウモロコシを含む炭水化物全般について摂り過ぎを注意すべきです。
実際、砂糖も油も肉も摂らない炭水化物中心の食生活をすると太りますし、
糖尿病は悪化するのですから。
砂糖=糖質だったら、さらに一歩進めて炭水化物=砂糖の図式も描いて欲しかったです。
何しろ、明らかに監督のデイモンは糖質制限者です。
これは劇中の彼の普段の食事を見たら一発です。
だから本人は分かっていて、「砂糖まで」に主張をストップしたのだと思います。
おそらく、興行のファイナンスの問題として炭水化物が危ない、ではダメだったのかもしれません。
砂糖が危ないというのは薄々気付いている人が多いから、砂糖が入っていないように思われるけど、実は大量に含まれていて甘く感じない食品をターゲットにした映画にしたのかもしれません。
この映画は上映館が少ないですし、スーパーサイズミー程の知名度もありません。バカバカしいノリはほとんど無くて淡々としていますし、タイトルがマジメ過ぎてバズる予感がしません(汗)
本当にもったいないですね。
そして、ほぼ間違い無くこの次にくる健康クラスタの映画は、炭水化物の摂り過ぎに警鐘を鳴らす映画になるでしょう。その映画がヒットして沢山の人が炭水化物=砂糖だと知った時に、糖質制限は当たり前のものとなると思うのです。
まだまだ糖質制限のクラスタは小さいです。
そして、健康に悩みがある人は食事から見直した方が良いです。
本作についてはもうちょっと上映館が増えたり、全編がyoutubeで見られるようにならないと認知されないでしょうね。
ただ、糖質制限者の人は上映期間中に見ておいた方がいい映画だと思いますよ。
糖質制限の主食についての記事
→ 本気で糖質制限をするのならこちら
追記
ニコニコ動画の生放送で本映画が公開されました。
同時に生放送で糖質制限についての対談が行われました。
感想や内容については下記の記事をご覧ください。

コメント
映画では「砂糖は悪ではないが控えた方がよい」と言われていました。
俳優は、自分の食生活を押し付けませんでした。それがいいと思いました。
穀物もとらない糖質制限はデメリットも指摘されており、まだよく分からない状況です。
やってた人がいますが「筋肉がつきにくくなった」「運動不足ではないのに、何もないところで肉離れをおこした」などで止めてました。
体質や個人差もあるので、人により危険があるのかもしれません。
(健康だと信じられてたものが実は、というのはこれまで頻繁にありました)
毎日飲んでいた清涼飲料水をお茶や水に変えるだけで大分違う訳で、それさえできない地域がたくさんあるわけで、決して糖質制限まで行かなくてもよいと思いました。
これのDVD版を見ました。
特典でインタビューもついていて、彼の食生活のことも紹介されていました。
砂糖実験後は、体重を落とすために炭水化物はとらなかったのうですが、普段は全粒粉のパンなどを食べているそうです。
炭水化物の食べ過ぎは良くないとはいってました。
上のコメントの方がいってるように、決して極端な主張をしないところが、このフィルムのいいところだと思いました。