うつの人を励ましているはずなのに何だか自分まで気分が暗くなってくるという経験をしたことがある人はいませんか?うつ病は伝染するのでしょうか?
うつ病がうつる、というと何かのダジャレのように取られそうですが、かなり深刻な問題です。
この件について精神科医に質問すると100%の確率で、うつ病がうつる事はない、認知症のヘルパーが認知症にならないのと一緒とか、細菌やウイルスが原因ではないので伝染病ではないと回答されるでしょう。
確かに伝染という意味を厳密に捉えれば、医師の回答は正しいです。
ブリタニカ大百科事典によれば下記のとおりですから、心の病は伝染病ではないので、伝染しないと言えます。
細菌、ウイルスなどの病原体の体内への侵入、増殖によって発病し、その病原体に感染させることによって他人にも同種の病気を起す可能性の高い病気。
感染症と同義で使用されることが多いが、感染症のなかでも人から人へ伝播するのが伝染病である。
しかし、いくつかの前提条件をクリアするとうつ病は間違いなくうつります。
うつ病がうつるケース
うつがうつるなんて言うと、ますます社会からの誤解や風当りが酷くなるので、元患者としても言いたくないのですが、間違いなく本当の話です。
しかし漠然としたイメージでうつるから排除!と思われる事が一番の問題なので細かく説明します。
うつがうつるのは病原菌によって引き起こされるのではなくて、心の同調によって引き起こされるのです。
うつ病患者と親しくて、接触時間が長く、思い入れが強い人ほど、うつ病がうつる確率があがります。
何故かと言うと、そういう思いやりの深い人ほど、相手にペースを合わせて、同調してしまうからです。
相手がつらい、苦しいと告白すれば、つらいんだね、苦しいんだねと共感してあげます。
女性などは解決策をアドバイスされるよりも問題解決されなくても、共感されたい、分かってもらいたい人が多い傾向ですから、そういった人と長く深く付き合うとうつは伝染します。
共感してもらえると何だか自分の苦しみが減った気がするんですよね(汗)
これはほぼまちがいなく、あの人の側にいると明るく元気になるとか、何となくやる気がなくなるといった雰囲気の問題の延長にある現象です。
マンガで分かる診療内科の説明でもこんな感じで、感応精神病について解説しています。
注意:途中に挟まっているボケとツッコミは省略しました(笑)
やはり身内にうつ病の人がいる場合はネガティブな影響が大きいですから、適度に距離を置き、抑うつ状態に巻き込まれないようにすることが大事です。
場合によっては冷たいと思われるかもしれませんが、患者本人にしたって大事な人まで苦しめたくないと思っているはずです、
周囲の人が一緒になって悩むより、逆に元気な状態でいる方が大事なのです。
カウンセラーや精神科医師がことさらに事務的な態度で接してくるのは、こういった影響を出来るだけ受けないようにする為でないかと思います。
ホントに弱っているときは「分かってくれない」かのように思える医師に、不信感を抱いたりしますが、立場を逆にして考えてみればムリだというもの分かります。
毎日毎日1日中、どよーんとした人が入れ代わり立ち代わり現れて、毎日眠れますかどんな気分ですか何時から続いていますか・・・なんて聞き続けるのですから、患者一人ひとりに共感していたら心が持ちません。
僕が受けたカウンセリングは背面法といって、カウンセラーに背中を向けて座り、背後のカウンセラーが色々と質問をしてくるといった形式でした。
カウンセリングの技術についてはよく知りませんが、これも正対する事で巻き込まれたり、同調してしまう事を防ぐ手法だったのかもしれません。
組織がうつを嫌う本当の理由
さて、うつ病は気分の同調という形でうつると回答しましたが、組織においてはこれがいったいどういう意味を持つか簡単に分かるでしょう。
組織の中でうつ病患者がいると、雰囲気が伝染して全員のパフォーマンスが落ちる恐れがあるのです!
想像しづらいのなら、逆のケースで説明しましょう。
ある営業課に新人が入りました。
彼は無茶苦茶明るくて、成績の良い若者です。
彼が部署の空気を盛り上げた事でみんなも負けてられないという気持ちになり、組織全体が活性化した・・・というのはよくある事です。
ムードメーカーと呼ばれる存在ですね。
でも、この逆パターンだって間違い無くあり得ます。
今までは問題なく運営されていた営業課に中途で社員が入りました。
彼は仕事の習熟が遅く、口数も少なく、あまりやる気も無さそうです。
課長が彼を放置した結果、営業課のみんなもテキトーでいいんだと思って、あんまり熱心に仕事をやらなくなってしまった。
人間はどうしても堕落しやすいので、楽な方へ流れがちです。
組織の管理者としては腐敗や堕落を食い止める為に、最底ラインを常に上に向かって押し上げる必要があります。
その為、うつ病患者が組織の中に発生した時、健全な組織であればあるほど、全員が無意識に異物として排除したがるのは当然だと言えます。
排除される方としてはたまったものではありませんが、組織の運営上は絶対に排除・隔離しないとダメなのです。
むしろうつ病社員をケアせずずっと部署に置いておく事で、雰囲気の悪化や社内イジメ、場合によっては自殺を招きかねません。
仕事の効率が悪かろうとも人手が足りないから・・とかね!
良い雰囲気を伝染させる
なんだか救いの無い話になってしまいましたが、人間に心がある以上、周囲の一切の影響を受けずに暮らすことはできません。
良い心も悪い心もうつります。
だから自分がうつでつらい時は明るく元気が出る映画を見るなどして、抑うつ状態を意識的に解消していきましょう。
何となくいつも気分が重いとか、思考がまとまらないという状態をぼんやりと流すのではなく、自分がいまどんな状態かというのを自分でモニタリングして、ちょっと上から管理できるようになると寛解まで近いでしょう。
うつ病の自分、という状態を「」に入れて見られるようにすることで、客観性が確保出来て、つらくて苦しくて不安な自分に飲み込まれないようになります。
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