筋トレの抗うつ効果をまとめてみた【筋肉の機能】

黒の背景に分離された馬のバッキングの古典的な白い大理石像 うつ病
黒の背景に分離された馬のバッキングの古典的な白い大理石像

筋トレを含む運動療法がうつ病に対して臨床的に有効であることはこれまで説明した通りですが、その効果について細かくまとめてみました。

筋肉の役割は単に重いものを持ち上げたり、素早く動くことが出来たり、見た目がカッコよくなるだけではありません。

筋肉が持つ抗うつの機能に触れると同時に、どうして筋肉が重要なのかという点から解説します。

筋肉の役割と自律神経

筋肉は肉体の見た目や運動能力に関わるだけでなく、血液を送り出すポンプの役割もあります。

心臓から送り出された血液が体内を循環し、筋肉の力で末端から心臓へと押し戻されているのです。

血液は心臓の力だけで全身を巡っているわけではありません。

特に足は第二の心臓という言葉があります。
太ももの筋肉は全身の筋肉の中でも最大級のものです。

これは体を支えるのと同時に重力に逆らって血液を循環させる役割があります。

だから下半身が衰えると血行が悪くなり、全身が衰弱していくのです。

寝たきりになった老人が加速的に弱っていく理由の一つだと言えます。

また、苫米地英人博士によれば、アメリカの大学の実験で下半身の丈夫さとIQが比例関係にあるという研究結果が発表されたとの事。

そしてポンプなのですから、よく収縮して十分に血液を押し流してくれればいいのですが、うつ病になると自律神経が緊張して筋肉がこわばります。

これは怖いものを見た時に体が硬直したり、緊張すると体がぎくしゃくする事と同じです。

うつの人は無意識の内に体が交感神経優位になりすぎています。

通常、交感神経が緊張すると血管を収縮させることで筋肉への血流を増やすので、活動的になるのですが、過剰に緊張すると血管を収縮させ過ぎすので筋肉までこわばるのです。

肩こりがひどい人がいくらリラックスしたつもりになっても、筋肉がこわばった状態である事と一緒です。

すると、緊張した筋肉(ポンプ)は、十分に収縮できないので血液を戻せませんし、血管だけでなくリンパも流れが滞ります。

リンパ液は、血管とは別にリンパ系を流れている透明な液体です。
擦り傷などが出来た時に血が出ずにじむ透明な液に覚えがあるでしょう。

リンパは感染や他の疾患と闘う手助けをする細胞を運び、リンパ液は血管の外へ染み出した血液中の血漿という成分やタンパク質が、全身にはりめぐらされた毛細リンパ管に再吸収されたものです。

リンパ液は古くなった細胞や不要となったものをリンパ管を通して運ぶのです。

血液との大きな違いとして、リンパの流れには心臓にあたる器官がありませんから、筋肉の力だけでゆっくりと体を巡っています。筋肉硬直の影響は大きいのです。

これで心(脳)の緊張は筋肉を介して全身に関係してくる事が分かってもらえると思います。

その為、運動をしたり筋トレをする事で緊張をほぐして機能を向上させる事は健康によいのです。

自分で筋肉を動かすのではなくリラクゼーションを目的として、リンパマッサージやリンパドレナージュといった名称で施術しているサロンも多いですね

心と筋肉は双方向に繋がっていますから、筋肉の緊張を緩める事で心の緊張も緩みます。

これが筋トレの抗うつ効果の一つです。

筋肉がリラックスできない構造的な理由

うつ病や抑うつ状態の人はリラックスしても筋肉が凝り固まっていると、説明しましたが、実は健康な人も構造的な意味で筋肉そのものから力を抜く事は出来ません。

一体何を言っているのか?と思われるかもしれませんが、これは事実です。

筋肉には1つの命令しか出すことは出来ないのです。

それは縮む事です。

あまり知られていない事ですが、筋肉は縮む事しか出来ないのです。

そんな事はない、伸ばす事も出来る、力を抜けば伸びるという反論がありますが、それは逆側の筋肉が縮む事で曲げる時に使っていた筋肉が伸びたのです。

肘を例にとりましょう。
肘を曲げる時に使われる筋肉は上腕筋や上腕二頭筋です。

厳密には腕橈骨筋なども含まれますがここでは割愛します。

いわゆる力こぶの筋肉です。

触りながら肘を曲げれば力こぶが膨らむので縮んでいる事がわかります。

この時に逆側の筋肉が伸びています。力こぶの裏の上腕三頭筋です。

この上腕三頭筋が縮む事で肘が伸びます。上腕二頭筋が伸びるので力こぶが凹みますね。

つまり、力を入れた筋肉が縮む事で関節は曲がったり伸びたりしているのです。

つまり構造的には厳密な意味で全身の力を抜く事は不可能です。

曲げていても伸ばしていてもどちらかの筋肉が縮んでいるのですから、緊張を意識する側の筋肉の程度問題に過ぎないのです。

これも例ですが、腕に大けがをして筋肉が断裂してしまった人は肘が鷲の翼のように曲がった状態になってしまいます。

昔の戦争映画などでは障害者として登場していました。

これは筋トーヌスといいます。姿勢を保持する筋肉のバランスが崩れてしまったのです。

リラックスするというのは出来るだけ、筋肉を意識しない事と言い換える事が出来ますし、筋肉から出来るだけ不要な緊張を取るためにはストレッチが有効です。

脳内物質の分泌について

2つ目は脳内物質です。運動をするとセロトニンホルモンが分泌されます。
これは分泌されると幸せになるホルモンとして有名ですが、本来の機能は自律神経の調整です。

うつ病の患者の脳にはこれが不足している事が確認されています。

僕の場合、駅の側などにある個人のメンタルクリニックでは、問診だけでうつ病と診断されて出された薬を飲んでいたのですが大病院の神経科でうつの診断検査をした時は、問診だけでなく採血されましたし、MRIで脳をチェックされました。

つまりうつ病の判定は患者の自己申告だけをDSM-5に当てはめて下すだけではなく、ある程度の数値化が可能だと言えます。

そして運動をする事それ自体が自動的に脳内のセトロニンを増やすので、抗うつ効果があると言えます。

また、ドーパミンの不足もうつ病の原因だとされています。
ドーパミンは快楽ホルモンとも呼ばれており、食事や音楽鑑賞を含めて分泌を促す方法はいくつもありますがその中には運動も含まれます。

脳内物質の分泌という観点からも運動をしたらうつが悪化したという人に対して、何かおかしい点があるのではないか?と、まず疑うのは正しいと言えるでしょう。

筋肉にうつの解毒作用

さらにcellという世界で最も権威のある科学誌に面白い報告があります。

なんと筋肉にはうつ病などの精神疾患の原因となる物質を解毒する機能があるとする研究結果がスウェーデンのカロリンスカ研究所から発表されたのです。

研究を主導したカロリンスカ研究所のJorge Ruas氏は

「我々は当初、筋肉を鍛えることで脳に有益な物質が産生されるものと考えていたが、
結果は逆だった。鍛えられた筋肉は、体にとって有害な物質を解毒(purge)する酵素を作っていたのだ。これはつまり、筋肉が腎臓や肝臓と似たような機能を備えているということだ。」

と、語っています。

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運動をする事で筋肉には「PGC-1a1」というタンパク質が発生し、これがうつ病の原因物質とされるキレヌリンを分解する、キヌレニンアミノトランスフェラーゼ(KAT)という酵素を発生させるのです。

つまり筋肉量が多ければ多いの程、精神疾患の原因となる物質を沢山解毒できるので、筋肉は付けた方がいい!という事です。

筋トレの抗うつ効果

最後に筋トレが持つ抗うつ効果をまとめると下記の通りになります。

  • 運動をするとセロトニンやドーパミンなどのホルモンが分泌される。
  • 運動をすると筋肉の緊張が緩和され、自律神経が安定する。
  • 運動や筋トレによって筋肉が付くとキレヌリンを分解する能力が高まる。

これだけの理由があれば運動とうつに関係が無いという思い込みや疑念は払拭できるのではないでしょうか?

運動療法や筋トレには明らかに抗うつ効果があるのです。

コメント

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